朝、なかなか起きてこない。声をかけても返事がない。
「いい加減にしなさい」と言いたくなる親。
布団の中で、自分でもどうしていいかわからない子。
この場面に、悪い人はいるだろうか。
私は、いないと思っている。
子どもも困っている。
そして、大人も困っている。

このブログは、そんな「みんな困っている」ところから始めたい。
子どもは何に困っているのか
学生の毎日は、大人が思っているよりずっと忙しい。
勉強、部活、友だち関係、進路。スマホを開けば、誰かの「すごい毎日」が次々と流れてくる。
▼ こんな「困った」を抱えていない?
- やることが多すぎて、何から手をつければいいかわからない
- 本当はしんどいのに、それをうまく言葉にできない
- 期待に応えたいのに、応えられない自分が嫌になる
困っている子ほど、「困っている」とは言わない。言えない。
その代わりに、無気力やイライラ、だんまりといった形で外に出てくる。
私自身も、そうだった
子どものころから、人に嫌われることがとにかく怖かった。
相手の顔色をうかがい、嫌われないように言葉を選び、気づけば人見知りになっていた。
「自分がどうしたいか」より「相手にどう思われるか」。
ずっと、他人を軸にして生きていた。
でも当時の私は、それを誰かに「困っている」とは言えなかった。
自分が困っていることにすら、気づいていなかったのかもしれない。

言わないのは、平気だからじゃない。
言葉が見つからないだけ。
大人は何に困っているのか
保護者の困りごと
声をかければ嫌がられ、黙っていれば心配になる。
どこまで踏み込んでいいのか、正解がわからない。
先生の困りごと
一人で何十人もの生徒と向き合い、授業も行事も対応もこなす。
一人ひとりの心の動きまで見たくても、時間も余裕も足りない。
私自身、教師として働いていたころがある。
子どもたちの前では自然体でいられたのに、保護者や同僚など大人との関わりには、ずっと苦手意識があった。
「先生」と呼ばれる立場でも、中身は一人の人間。
うまく関われない自分に悩みながら、それでも毎日教室に立っている。
先生もまた、困っている。
▼ 大人が抱えがちな「困った」
- どう声をかければいいのかわからない
- 「自分の関わり方が悪かったのかも」と責めてしまう
- 気軽に相談できる相手がいない

正解がわからないまま向き合っている。
それだけで、もう十分がんばっている。
なぜすれ違ってしまうのか
子どもも大人も、相手のことを思っている。なのに、なぜかすれ違う。
そこには、私たちの脳が持っている「クセ」が関係している。
クセ① 相手の行動を「性格」のせいにしてしまう
人は、他人の行動を見ると「その人の性格」のせいだと考えやすい。一方で、自分の行動については「状況のせいだ」と考えやすい。
心理学ではこれを「根本的な帰属の誤り」と呼ぶ。
親は 👉「この子はやる気がない」と見てしまう
子は 👉「親はわかってくれない」と感じてしまう
でも本当は、どちらも「状況」に困っているだけかもしれない。
クセ② ストレスがかかると、考える脳が働きにくくなる
強いストレスがかかると、冷静に考えたり気持ちを整えたりする脳の部分(前頭前野)の働きが落ち、感情的な反応が強くなりやすいことがわかっている。
つい強く言ってしまう大人も、固まって動けなくなる子どもも、実は脳が同じような状態にある。

すれ違いは、愛情が足りないからじゃない。
脳のクセから生まれることも多い。
「困った子」から「困っている子」へ
アメリカの臨床心理学者ロス・グリーンは、こんな考え方を示している。
子どもは、できるなら、うまくやる。
うまくできないのは、やる気がないからではない。
まだ乗り越えるためのスキルや、環境が足りていないから。
そう考えると、かける言葉が変わってくる。
❌「なんでやらないの?」
⭕ 「何に困っているんだろう?」
❌「ちゃんとしなさい」
⭕ 「どこでつまずいている?」
そしてこれは、大人自身にも当てはまる。
怒ってしまう自分も、うまく関われない自分も、ただ困っているだけ。
責める相手を探すより、一緒に「何に困っているか」を探す方が、ずっと前に進める。

「困った子」に見えるときほど、その子は困っている。
大人も、きっと同じ。
このブログでやっていくこと
とうふのように、やわらかくて崩れやすい心。
でも、やわらかいからこそ、少しずつ形を変えていける。
私はふだん、高校生と1対1で対話しながら、その子の「本当はどうしたい?」を一緒に見つけて、行動につなげるサポートをしている。
たくさんの生徒と話す中で感じるのは、困っている子ほど、自分が何に困っているのかをまだ言葉にできていない、ということ。
そして、その子を支えたい保護者や先生もまた、どう関わればいいのか迷っている、ということ。
だからこのブログでは、子どもと大人のあいだに立つ立場から、すれ違いをほどくヒントを届けていきたい。
▼ このブログで届けること
- 🎒 学生・生徒の「しんどい」に寄り添う
- 🏠 保護者・先生の「どう関わればいい?」に一緒に向き合う
- 🧠 教育と認知科学の視点から、明日を少し楽にする方法を届ける
まとめ
✅ この記事のポイント
- 子どもは、困っていても「困っている」と言えないことが多い
- 大人も、正解がわからないまま悩んでいる
- すれ違いの多くは、誰かが悪いのではなく脳のクセから生まれる

誰も悪くない。みんな、困っているだけ。
だから、一緒に考えていこう。
まずは、今の自分の心の状態を知るところから始めてみよう。
※つらい気持ちが続くときは、一人で抱え込まず、身近な大人や学校の先生、スクールカウンセラー、地域の相談窓口に相談してください。
参考
- Ross, L. (1977). The intuitive psychologist and his shortcomings. Advances in Experimental Social Psychology, 10.
- Arnsten, A. F. T. (2009). Stress signalling pathways that impair prefrontal cortex structure and function. Nature Reviews Neuroscience, 10.
- Greene, R. W. The Explosive Child(ロス・W・グリーン)
